643590.jpg bind_37.jpg bind_free076.jpg

鼎談「日本の中小企業とSDGs」第1回目

今、だからこそ考える「企業のSDGs
~ビジネス・デザインの推進する企業支援「未来会計」との親和性~


ーー 本日は、りんくの2023年・新春鼎談「日本の中小企業とSDGs」ということで、
りんくグループ・税理法人りんく 代表 小久保忍
かながわ経済新聞合同会社 代表 千葉龍太
株式会社シナプス悉皆屋ユナイテッド株式会社 代表 古里健司
このお三方と共に進めて行きたいと思います。

(敬称略)

 
小久保 千葉 古里 
はい、宜しくお願い致します。
 
ーー 早速ですが、まず読者の方向けに改めてSDGsの概略をどなたか簡単にお願いできますでしょうか?
 
古里
まず2015年にニューヨークの国連本部開催された際に、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」ということで、SDGsが採択されました。当時は15年先までの話でしたが今や2023年となり、残り7年ということですよね。
 
内容については、17の目標と169のターゲットが設定されましたね。
まず、目標1〜6までが「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「安全な水とトイレを世界中に」
日本人だったら当たり前すぎて、逆に実感のない事かもしれませんね。こちらに書かれてることは主に発展途上国に対する支援という側面が大きいと思います。
また、目標7〜12には「働きがい」「経済成長」「技術革新」「クリーンエネルギー」などの言葉が並びます。
それから、目標13〜15。気候変動、海洋資源、生物多様性などグローバルな課題解決の必要性に言及しています。
そして目標16では世界平和を目指す項目が掲げられ、目標17では国家や企業、人々の協力を呼びかけ、目標1~16すべてを達成するために互いに手を取り合うことが求められています。
目標13以降は「グローバル」「多様性」など、資源に対する協力体制なので、生活者個人目線ではスケールが大きすぎて実感がなくなってくるという部分があると思います。
なので、SDGsは「言ってることは素晴らしいことだ」と思うのだけども、生活者からするとミクロすぎて見えない部分とマクロすぎて実感しにくい部分の両方があるのかなと思います。
そこで本日は、中小企業や生活者個人がSDGsを実行しようと思った時に、どうやって実行に落とし込めるのかというところをお二人と話したいと思っております。
中小企業に対してのアプローチを非常に得意とされてるお二方なので…。まず、中小企業の支援という側面から小久保さんいかがでしょうか?
 
小久保
正直言って、SDGsは「大企業が発信したので、それを受けて中小企業も認識するようになってる」というのが現状ではないでしょうか?
特にこの地域(※神奈川県央地域)では、さがみはらSDGsパートナーの認定を受けようなどだとか、どちらかというと形から入ったというのが中小企業の取り組みの実態かなって感じがします。
SDGsって環境対策のイメージが専攻している気もしますね。
また、中小企業が日頃から取り組んでる「働きがい」や「産業基盤をつくろう」などもSDGsに関連づけられるのかな、とも思っています。
実際、アピールの形から入ってるような中小企業も少なくないのではないでしょうか。
 
古里
そうですね。ただ、形から入るってのは正解だと思っていて、掴みどころのない事だからこそ、わかりやすい形から入っていくポーズはあってもいいと思います。ただ、その先を維持するにはモチベーションが必要になりますよね。
SDGsは継続しなければ意味がないので、“次のステップ”というのが、おそらく課題になるのではと思っています。
 
小久保
おっしゃる通り、形だけで終わらせないでいかに次に結びつけるかですよね。
中小企業もやはり営利企業なので、利益とか自分たちの事業に繋げなきゃいけませんから。そこに繋がるように今後取り組んでいくことが、次のステージかなという感じがします。
 
古里
千葉さんはいかがですか?
 
千葉

わたしがSDGsについて感じるのが、まずSDGsの前に、その背景を見てみく必要があるのでは、ということです。
企業とSDGsという視点に立つと、戦後の高度経済成長の時期に日本でも公害問題がありました。
そこで、企業は購買に対して対策をしなきゃいけないという時代になってきて公害対策から環境対策に変わり、やがて「環境経営」などが出てくるわけです。
その後2013年にCSR経営という言葉が広まりましたが、環境だけでなく、サスティナビリティにも目が向くようになってきたという歴史があるんです。
世界的にも企業のさまざまな不祥事がある中で、「経済活動だけではなく環境対策や社会問題も大事だよね」という流れが2013年ぐらいにできはじめました。
「環境と社会と経済これらをバランスよくやってきましょう」と。これがCSRに繋がっていますね。
2012年以前までは中小企業を取材させていただくと、環境とかCSRとか、頭には入っていると思うのですが、「すぐ利益にならないからやらないよ」というご意見が多かったです。
ところが、2013年以降CSRが普及し始めてからは、各大手企業がグリーン調達等に取り組みはじめました。中小企業に対して、「取引するには、ちゃんと環境と環境活動やりなさい。CSRやりなさい」と。
大手企業が調達時にそういう要素を盛り込むようになってきて、中小企業の意識が変わってきたのではないかと思います。
SDGsはあらかじめ目標が具体的に(※17の目標、169のターゲット)決まってるので、「CSR」「環境経営」という言葉よりも「SDGs」の方が中小企業にとっては取り組みやすいのではないでしょうか。
 
古里
そうですね、ただ現在の中小企業の取り組み方として少し残念な事もあります。
中小企業の経営者たちがどこまでSDGsに関する文章を読んでいるか分からないですが、個別に話をしていると大枠しか掴んでいない印象があります。
例えば最初の目標1から目標6までというのが“発展途上国向けのテーマ”“貧困に対する支援”という側面が多いですが、「それって遠い国の話だよね。」で終わってしまってる印象があります。
読み込んでいくと、もっとDX活用に繋がる話なども出てきて身近な活用方法も見えるので、もう少し踏み込んで欲しいなと思うところはあります。
そちらも踏まえて、メディアやコンサルの立場として生活者の方々と触れ合った時の具体的なケーススタディなどが見えるといいかなと思うのですが、いかがでしょうか?
 
小久保
我々ビジネス・デザインでは、“未来会計”と称して目標設定をする前に、将来どのようにありたいかなどの目的を明確にするところから始めて、目標設定をし、それにたどり着くための打ち手(戦略・戦術)を一緒に考えていくお手伝いをやらせてもらっています。
SDGsは2030年までのターゲットがありますが、例えばそちらにリンクさせて、中小企業だったらどうやって生産性を向上させていかなければならないか、自分たちの組織をどうやっていいものにしていきたいかなどを考えることができる。
目的を会社全体で共有することによって組織は活性化し、結果として生産性が上がって、自分たちが目指す組織にたどり着くと思っています。
例えば、「女性の活躍を期待したい。産休育休もしっかり取れるような組織にしたい。ではそのためにはどういう形態にしなきゃいけないのか。」という課題に向き合っているならば、「目標5ジェンダー平等を実現しよう」や、「目標8働きがいも経済成長も」に関わっているわけで、そういう意味では中小企業はすでに取り組んでいますし、今後も取り組みやすいと思います。
 
古里
そうですね。会計事務所にとっては経営計画を作ったり、経営計画から企業支援をやってるということだと思うのですが、そのアプローチの仕方ですと取り組みやすいですね。
 
小久保
中小企業にとってSDGsというと世界的な取り組みで自社とかけ離れたイメージを持つことが多いでしょうが、自分たちが既に行っている取り組みがSDGsの17の目標、169のターゲットのどこに当てはまるのかを考えるところから始めると身近なものと感じられるでしょう。
さらに、自分たちのありたい姿を考えて、そこにたどり着くための打ち手もSDGsに当てはめて考えてみると無理なくSDGsの意識を継続させることができると思います。

.

鼎談「日本の中小企業とSDGs」第2回目

 新聞社・編集長が見た「SDGs実践企業」のリアル
~本業の中で社会課題解決に取組む会社たち~


古里
なるほどですね。千葉さんにお伺いしたいのですが取材先の方々の反応はいかがですか?
 
千葉
SDGsの視点で見ると、わたしの取材先でいわゆる「長寿企業」とか「100年企業」と言われてる会社が何社もあるんですけど、色んな取材をしていくと会社が長い歴史を有するようになった理由として、各社共通するのが、SDGsの項目に何かしら引っかかることをやっているんです。
例えば「 セラリカNODA」という会社が相川町にあります。江戸時代創業の会社(※創業90年)なんですが、何をやっている会社かというと天然ロウですね。天然ロウって、江戸時代はお相撲さんの髷等に使われていたようで、今はコピー機のトナーに使われているようですね。熱に溶けやすく固まりやすいので、他にも口紅や化粧品などいろんなところに天然の物が使われているんです。
また、住宅でも使われています。石油由来原料ですとホルムアルデヒドの問題があってシックハウスの原因になってしまうので、「住宅のワックスは天然成分がいい」「脱石油」ということで、20人程度の会社なのですがすごく戦ってきたんですよ。私は20年前からそちらの社長を知っているのですが、SDGsで環境の気運が高まってきて、今は時代が追いついてきた感じですね。
 
もう1社。「 日本濾水機工業株式会社
という会社があります。創業104年目でしょうか。
水処理の会社なのですが、災害時に汚水から飲める水に処理できる。今は製薬会社向けにバイオテクノロジー施設の蒸留水・ピュアスチーム(PS)など、さまざまな分野でやっていますね。
 
あと「 T.K.K.ホールディングス
という会社があります。今年111年。こちらの会社は、給排水のプロフェショナルですね。
マンションなどの排水槽って溜まってしまうと、とても生活が不便になってしまう。パンデミックの原因だったりするのですが、人が嫌がるような排水槽の清掃を、ずっとやってきています。他にも、マンションには赤サビが発生するのですが、それを浄化する装置を作ったりもしています。
やっぱり長寿企業と言われてる会社は、社会課題に対して解決するようなことを何かしらやっている。SDGsの目標達成などに繋がってることをやっていると思います。
だから、中小企業であっても本業の中で社会課題の解決を繋げていくことをやっていかないと、なかなか生き残れないと思います。
 
古里
なるほど。千葉さんの取材先の中では、日本だけでは無くグローバルな視点で取り組んでる企業などもありますか?
 
千葉
先ほどお話しした「セラリカNODA」ではJICAで行ったプロジェクトの事例があります。天然ロウの原料は森林でとれるのですが、砂漠化している地域に対して植林して、生物ロウの原料を採取する。
その結果、貧困問題や砂漠化問題の解消に繋げていく。

古里
とてもいい取り組みですよね。伝統技術はそのまま守っていこうと思うと、今では活用できないものとして博物館入りしてしまうのですがやはり伝統技術を今の時代に活用できるようにするには技術革新が必要なんですよね。
伝統プラス科学技術というのが必要になってきて、その融合を実現することで新たな伝統も生まれ企業文化も育っていく。その取組の中で、社会貢献とかSDGsも含めた問題解決に繋がっていくのは理想的ですよね。
では私からも一つ。相模原で「 HAYAMI
という会社があります。三人の若者によって立ち上げられた、草ストローブランドの会社です。
無添加・無農薬・保存料不使用の完全自然由来の製品をベトナム・ホーチミンで栽培していて、発展途上国の農村に新たな雇用を生み出ししている。
何故ここに着目したかというと、社長がまだ大学生なんです(※対談時現在)。
現在、小学校とか中学校でもSDGsの教育が始まっていて、大学の講義の中にもきっちりSDGs講座って入っているんです。実は大人が感じてる以上に、SDGsが社会に根付いてきたことの一つの結果かなと思っています。
 
千葉
相模原の企業で言えば「 セラム・グループ
という飲食店コンサルをしている会社があります。そちらの企業は、数年前に神奈川県が誘致した香港の「エコ移動社」っていう生分解性の食器を作っている企業と組んでいるんですよ。
テイクアウトの容器などを土に変える等の取組をしています。
 
古里
それはちゃんとしたSDGs対応ですね。
よくSDGs対応ということでスターバックスさんなども使っている紙ストローですが、あれは湿度に弱いがゆえに湿気ないようビニールのカバーで覆われていて、皮肉なことになっている部分もある。
まともに考えていけば、おかしいだろうってなるのだけれど、ポーズだけでやっていると、いつのまにか本末転倒してしまうところがある。
SDGsに“事業として”真剣に取り組むかどうかによって、企業間でその“成果”に差がつきはじめていますよね。
 
千葉
川崎に面白い会社があるんです。
ユニオン産業」という会社で、プラスチックの射出成形が本業なのですが、自社商品でバイオマスプラスチックを製造していて、植物や竹、ジーパン端材を破砕したものをプラスチックに入れるなど、燃やせるプラスチックの新素材を開発しています。
竹を入れることで抗菌効果を出すなど、付加価値をつけた物作りをやっています。
 
古里
そうですね。そこには技術も必要だから、資源を無駄なく使うためには、例えば産学連携とか、アカデミア(※学界)の力もきちんと借りた方が、効率の良い開発と新技術も生まれるのでいいのではと思います。
別な例ですが、北海道の「 猿払村」がプラスチックメーカーの「 甲子化学工業
と共同で、ホタテの貝殻と廃プラスチックを原料にした「オールごみ由来」の素材を使ったヘルメット「ホタメット」を開発しています。北海道ではホタテが大量に取れるので、何万トンっていうホタテの貝殻ゴミの山が社会問題になっていて、環境への悪影響が懸念されていた。
これがですね、まったく普通のヘルメットでしかも頑丈なんですよ。ホタテのデザインを組み込んでいるので、同じ材料であっても割れにくくなっている。
“エコ×デザイン×技術”という新しい形の取組だと思います。
地方でのこういった取り組みや、大学・学生さんも含めてSDGsをアカデミックに学んできた人たちが今世の中に出始めてるので、今までポーズでやってきたところから、少しだけ前に出てきたかなといういう感じが、最近はしています。 これがSDGsだけじゃなくて、その先にも多分繋がってくんじゃないかなと思ってます。
 
小久保
日本に多く存在している100年企業をウォッチすると、みんな何らかのSDGs的な取り組みをしているというのは興味深い話ですね。
“原理原則、本質を追求していけば偉大な会社になっていく”というお手本の存在は、我々中小企業を支援している者たちにとっては大変心強い。
また、我々昭和世代が意識しているよりも、若い世代のほうがSDGsの意識が浸透していることは、しっかり心に刻みながら事業活動をしていかなければと感じました。

.

鼎談「日本の中小企業とSDGs」第3回目

企業にとって「ちょうどいい」SDGs実践を考える。
SDGsDXと相性抜群!〜


古里
SDGsの取り組みとして、始めはポーズだけでもいいのだけれど、企業としては取り組んだ後のことまで考えていって欲しいなと思っています。
そこで、段階の話をさせてもらいたいのですが、まず、第1段階にSDGsそのものに興味もなく知識もない層。
次の第2段階になると、「SDGsって耳にしたよ」というレベルの方々。ただ、耳にしただけで実践はしてない。
そして次の第3段階、「ちょっと関心があってSDGsをやり出したよ」というところが、世の中の中小企業のほとんどだと思うのですよね。
SDGsの難しさは、そこから先に踏み込むと項目がとてもたくさんあって、網羅的で関連し合ってるからこそ逆にSDGsの本質が見えにくくなってくるところ。
第3段階からは、ちょっと計画的に取り組まないと継続できない。
始めは自分1人で取り組めるSDGs問題だったのが、家族とか友人と一緒にできるというSDGsレベル、それから会社単位・地域単位にスケールアップしていく。
市区町村等自治体の単位でできること、つまり、地域というのは文化だと思うので、その中に先ほど言った伝統技術や伝統工芸というものがあって、さらには新たなテクノロジーを加えることで何かを起こせる。
先ほどのホタテの話もそうなのですが、あれはホタテの文化がある地域だからこそできる事。
多分、地域でできるこというのは、それぞれ日本各地で地域と企業・産業が技術革新を通じて経済というところに繋がってくると、特徴も出てくるかから事業も見える化がしやすい。
自分事だけだと差別化できないし、他人が何をやっているかもわからないから、SDGsの成果が見えにくいのだけれど、今後地域の特徴が益々出てくるといいなと思います。
いったんここで消費の話に戻りましょうか。SDGsの話とエシカル消費の話って一般的に繋がっていない方が多いと思います。エシカル消費の方が認知度も少ないのですが。
ただ、エシカル消費自体はSDGsの中のカテゴリーの1つであって、「より良く使う」こととして、エシカル消費がSDGsのとっかかりになると面白いなと思います。
企業も、消費者の目線で物事を考えた方が自分のこととして真剣に捉えられる。例えば、ものを有効に使うということもそうです。
それから適材適所と言う考え方があって、これって「りんく」のキャッチコピーである「ちょうどいい」に通ずるのですが、“ちょうどいい活用方法”っていうのが、エシカル消費の目指せる方向かなと思っています。
「りんく」で取り組んでるDX活用というのはまさにそこですよね。「ものを無駄に使わないで経済活動とか社会活動が行える」というのは、実はDX活用じゃないですか。
だからDX活用はSDGsと親和性が高いと思います。
 
小久保
DX活用って、ちょうど国の政策である電子帳簿保存法とかインボイス制度とか、デジタル庁がDX化を推進しようとしていたり。DXがキーワードになっているのですが、それはそもそも日本の中小企業って、他先進国と比べると生産性が低くて、あまり豊かとは言いにくいですよね。
豊かではないということは、生きるのに精一杯なのであまり環境保全だとか社会貢献だとか、そういうことが考えられないような状況だと思います。
こと日本の中小企業は、大企業と比べると2倍以上の開きがある。
2倍以上の開きがあると、大企業は社会貢献しようだとか発展途上国を支援しようだとか、きちんと自分たちでエシカル消費の動向も見て、ちょっと値段が高い方でもしっかりそこに貢献できるようなものを選ぼうだとか。そういうことに繋がってくるのだろうけど、中小企業ってそういう余裕がないところが多い。
その根本的な生産性を中小企業も大企業並みにあげるにはどうしたらいいのかと考えると、今の時代は(DXを)活用しやすくなった。大企業と中小企業って、かつては投資に大きな格差があったけれど、そこのハードルが低くなったから。
この時代の流れをうまく活用して、DX化し生産性向上していって、余裕を作っていこうというやり方もある。
紙をなくしてDX化に繋げて、「会議でもそれぞれが紙で見るのではなくてタブレットで見ようよ」というだけでもSDGsに貢献しているし、それを自覚できるとよりSDGsが身近になる。
 
古里
そうですね、単純なリプレースだけだと紙が電子デバイスになっただけで、めんどくさいなと思われてしまう。そこに「アーカイブができる」「検索できる」とか、いまだと人工知能の活用が身近になってきたので、プラスアルファの機能をちょっとだけ出してあげるとリプレースした価値が倍増する。
それが、これからのDX活用の方法だと思います。
 
小久保
あともうすこし(SDGsに)繋がるとすると、今まで単純作業に追われていて時間と余裕がなかったのものが、単純作業はRPAでやってもらって、人間がやらなくてもソフト上でできるようなことはどんどんそちらに任せていく。そうすると人間は、ちょっと大げさに言うと、クリエイティブに専念できる。
人間は考える仕事だとか、アイデアを活用できるような仕事にシフトをしようと考えると、働きがいも経済成長もに繋がってくる。
その辺が我々「りんくグループ」の役割として大事なので、もっとSDGsを身近なものとして意識することに繋がればいいかなと思います。
 
古里
そうですね。まさにそうい意味では中小企業にDX化推進をしている「りんくグループ」のような取組がもっと増えるといいですね。
 
小久保
りんくグループは中小企業のDX化の支援を事業として取り組んでいますが、それ自体も中小企業の生産性向上を通じて働きがいや経済成長につながるし、限られた資源を大切にしていくことにもつながるということが改めて意識できました。変化を脅威と認識するのではなく、チャンスととらえてありたい姿にたどり着ける中小企業を増やしていければと改めて感じました。
 

SDGsを事業の未来につなげる!
〜専門家としての我々(経営支援の専門家・新聞社・事業プロデューサー)の役割と連携〜


古里
余談なのですが、先日小久保さんから紹介された銀行さんのお客様の事業支援の件ですが、その後山梨の養蚕農家さんを紹介されました。親子2人で経営されていて日本国内生産量で3番目くらいなのですが、先細り業界なのでなにかをしていきたいという相談。
結論をいうと、私の顧問先でシルクから薬を使う製薬会社があって、マッチングしています。
日本では高貴な方々の着物はすべてシルクで作られていました。肌にもいいし健康になるから本当は使うべきなのですが、庶民にとっては高いから使えない。また日本以外の生産国の提示するが価格が安すぎて日本での生産がビジネスになりにくい。そういった側面もあり日本では業界として先細りになっています。
そこで、打開策として山梨の養蚕農家さんは昆虫食に目をつけていました。昆虫食はSDGs的にも世界的にはトレンドになっているんですね。
長野とか山梨って蜂の子などを食べる文化があるから、缶詰とかにしても売れるのだと思いますが、なかなか日本全国に波及するのは難しそう。事業化するのは相当時間かかるだろうと私は思っています。
一方マッチング先のシルクの製薬会社が何をやっているかというと、無菌蚕からとれたシルクのタンパク質が人間のタンパク質と非常に近い組成なので、手術用の糸や人工皮膚や人工骨の材料を作る製薬事業を行っています。
無菌蚕を作っている国はまだあまりないので、もし日本で自動養蚕システムが構築できたら養蚕農家にとっても面白いかなと思っています。
この無菌養蚕でできた蚕は、糸を採った後も無菌の蚕として有用でして、例えば冬虫夏草の良質なベースになるなど無駄なく資源を使えるという意味でSDGsにも親和性があると思います。
こういった事業に転換するには、いわゆる農業の六次化なのですが、これには投資が必要なんです。そこで日本の金融機関には投資してほしいなと。
SDGsにもなるし、今にも衰退しそうな産業が日の目を浴びることもできるし、新しい科学技術の発展にも繋がりうる。なにより、その地域の活性化にもなりますしね。おそらくそういう視点が必要で、自分事だけだと見えてこないけども、世の中事の視点で見ると事業の見え方が変わってくるかなと思います。
こういう情報は経営者にとって必要なので、千葉さんたちのようなメディアの力をこれからも発揮してもらいたいなと思ってます。
 
小久保
そういう意味では、今話を聞いていて思ったんですけど、いろんなもの・情報を収集して繋げていくって結構大事になってきていますよね。
かながわ経済新聞さんや古里さんなど、マッチング力がある人に情報発信して繋げてもらって活かしていくということは、非常にSDGs実践に繋がるかなと思いました。
 
古里
連携するということが事業にも繋がっていく。それが今起きつつあるので、今後のケーススタディになってくれればいいかなと僕は思っています。だからりんくさんは、りんくの領域をもっと広げてもらって、もうちょっとワールドワイドな情報まで繋げられるようになると、もっとシナジー効果が出るかと思います。
事業って出口が大事だから、いくらコネクションを作っても、出口を持っていないと事業・産業ならないですよね。
そういった意味では、日本国内のパイだけで考えるとなかなか事業の出口が作れなくなってきているので、世界規模の視野で出口を考えていった方がいいのかなと思っています。
やはり世界を見ると解決しなければいけないものが山ほどあるのだなと。日本にいるとSDGsの1番・6番・7番・11番などは見えにくくなっています。解決済みかのように見えてしまうから。でも、世界を見ると全然解決できていない項目がたくさんある。
もし日本がそれを解決しているのだったら、その改善策を提案できるはず。
例えば、日本人はゴミを拾うし、日本は綺麗な国だといわれているけれど、30年ぐらい前のことを考えれば、みんなタバコのポイ捨てはしているし、日本そのものもそこまでクリーンな国ではなかったはず。それでも解決してきた。
日本が先に解決していることはそこで伝えられるし、産業としてもそこが使えることなんじゃないかと思う。
 
千葉
日本はやはり環境技術とか、昔オイルショックを経験しているので省エネに関する技術とか、豊富に存在しますよね。その辺を外交の武器として活用する必要もあるのではと思います。世界に必要なものを日本は持っているので、その辺もう少し国際競争力の強みとしてやっていく必要があるんじゃないかな。
あとは、情報というキーワードが出たのですが、私は今、新聞をやる者として思うのは、今のネットの文化(検索すればなんでも出てくる、YouTubeを見れば何でもできる、知りたいものがいつでも知れる、検索できる)ってとても便利ですよね。しかし同時にこれもちょっと危険性があるなと思っています。1つは、フェイクニュースもすごく増えていまして、「なにがなんだかわかんない、何が事実だかわかんない」っていう状態になってきている。
あとは、その検索文化が発展することで、いろんなことを知る機会がなくなってしまうん。
興味あるものは検索して掘り詰めて、とマニアックになる一方、他のものを知る機会を失っているのです。
なぜ新聞が紙という媒体で出しているのか。まず取材をして、実際の自分の足で稼いで目で見て話を聞いて、それを第三者の目線で発信をします。
あとは、紙で出すことで信頼性が高まるということ。その検索文化でできないような事や、隣の(事業など)いろんな情報を知る機会が喪失しない。
もう1つ、うちがやってることで他と違うことがあります。「ソリューションジャーナリズム」っていうことを標榜してて、これはハーバード大学の提唱した概念なんです。「記者が取材をして報道しました。」というのは普通のニュース。
「記者が取材をして、困ってること課題の発見をして、それに対して課題解決に記者本人が取り組みます。」これがソリューションジャーナリズム。
どんなに高い存在意義があっても、知ってもらう機会のはない中小企業を掘り起こして新聞という記事にし、同時に課題を見つけていきます。
取材をする上で培ってきた企業ネットワークという強みがあるので、弊社はその課題を解決できるような企業をマッチングしています。結果として、弊社は年間100件のマッチングをやっています。
つい先日も神奈川新聞の人とも話したのですが、地域の新聞って発信をするだけではダメになっていて、お客さんのお困り事解決もできるようにしていかないと、地域では意味ないよねという話になりました。
取材を通して、様々な人に対して情報を提供したり、繋げたり、ビジネスが発展するようなことを支援していますね。
 
小久保 古里
素晴らしい!
 
古里
日本の新聞社って、取材するじゃないですか。実は取材をする新聞社って珍しいんですよね、世界の中で。諸外国ではほとんど引用で、韓国なんかもマスメディアってほぼ取材しない。そういった意味では、日本のメディアが取材するというのは、すごくいいことだと思ってます。
 
千葉
ネットで「こたつ記事」っていう言葉が流行っています。
ネットのこともそうなのですが、テレビ番組でこの芸能人、こんなこと話してましたって。この有名人のブログでこんなこと言ってた、みたいな記事って、よくネットで見かけますよね。テレビ番組やブログをチェックして、そのまま記事にしてしまう。これを「こたつ記事」といいます。
 
小久保 古里
あー、なるほど!
 
古里
世界はそれこそローコストで情報を仕入れている。偽情報に踊らされてしまう部分はマスコミも含めてあるので、今後マスコミの中に是非欲しい機能があります。「独立したファクトチェック・ジャーナリスト」がいるといいですね。
 
千葉
日本のメディアもそのなんか殿様商売をしすぎていて、なかなか難しいですよね。
 
古里
だとしたら、千葉さんの「かながわ経済新聞」にはファクトジャーナリズムとして期待したい。
小久保さんの「りんくグループ」には企業連携・情報連携のハブになって頂きたい。
今回のSDGsの展開も、その延長線上にあると思います。
 
千葉
頑張ります!
 
小久保
われわれ中小企業を支援している立場として、アンテナ高く情報収集して、いるんな専門家と連携して課題解決に取り組んでいく使命をもっていることを改めて感じました。りんくグループの「りんく」という社名は、いろいろな専門家とリンク(縁、連携)しながらお客様をサポートしていこうという想いに由来しています。
それぞれの会社が連携し、社会に価値を持続的に提供することで生産性が向上して、環境に配慮する余裕も生まれ、みんなが幸福を感じられるようになる好循環を起こす。これぞまさに、SDGsの取組であると感じます。

鼎談場所:税理士法人りんく